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ディスコの卵

ディスコの卵

「自分たちなりのダンスミュージックを作れたら新しい方向へ行けるんじゃないかと思った」。ゲスの極み乙女の川谷絵音(Vo/G)は6作目のオリジナルアルバム『ディスコの卵』について、Apple Musicに語る。以前にミニアルバム『踊れないなら、ゲスになってしまえよ』(2013年)をリリースしたように、彼らはこれまでも“踊る/踊らない”を一つのテーマとしてきた。2022年に結成10周年を迎えて区切りがつき、2023年に活動11年目に入った節目で、改めてそれにフォーカスしたのだという。ただしゲスの極み乙女にとってのダンスミュージックは、クラブのフロアを沸かせるようなものとは一線を画す。「そもそも僕ら4人の中でクラブに行くような人間はいないから」と川谷が笑えば、ちゃんMARI(Key)も「みんなクラブミュージックより、ファンクやソウルが好きだよね」とうなずく。彼らが思い描くダンスミュージックとは、踊るための音楽というより、「自分ではどうしようもない感情を解放させられるもの」だと川谷は説明する。「例えばライブを見ている時、心は躍っているけど体は動かないことってあるじゃないですか。そんなふうに自分のコントロール下にはない喜怒哀楽の動きが自然と出てくることが、“踊る”ということなのかなと僕は思っています」。その意識は、本作に収録された「ゴーストディスコ」の「真夜中に一人深く踊れ」というフレーズにも表れている。 リスナーそれぞれが自分のペースで好きなように踊ってほしいという思いがあり、本作では力を抜いて作ることを意識したと川谷は言う。「これまで僕らの音楽は切ない感情にフォーカスした曲が多かったので、今回はそれをやめてみようと考えた。『DJ卵』では実際に卵を割る音を入れてみたり、ちょっとふざけて録ったボーカルをそのまま採用したり。それでもサウンド的にはかなり挑戦的なことをやっていて、ダンストラックでありながらバンド感もある。聴き込むほどに深くはまれると思います」。目指したのは、新旧のファンが楽しめて、前に進めるダンスミュージック。バンドとして新たなモードに入ったことを示す本作について、ここからは2人にいくつかの楽曲を解説しておらおう。 Funky Night 川谷:妙に明るいこの曲を1曲目にすることで、これまでとは違うモードであることを見せたかった。僕らが以前発表した楽曲「某東京」や、くるりの楽曲「BABY I LOVE YOU」を歌詞に入れたのは、ファンのみんなにちょっとニヤリとしてほしくて、遊び心をもって書きました。この曲の最初のコーラスは、曲中にある歌を逆再生した音をちゃんMARIに歌ってもらったもの。 ちゃんMARI:声で再現するのはものすごく大変で、みんながごはんを食べている中で1人孤独に耐えながら練習しました(笑)。 ゴーストディスコ 川谷:「レビレビアーヤ」という歌詞は特に意味はなくて、何か合うものはないかと考えて最初に出てきたフレーズ。そういう語感が面白い、みたいな感覚がこのアルバムにはあります。 ちゃんMARI:最初はスローで始まるけどサビで急に華やかになる展開は、これまでゲスの極み乙女にはあまりなかったと思います。歌とコーラスを録ったところで川谷君が徳澤青弦さんにストリングスを入れてもらうことを決めて、そのおかげでさらに良くなったと思います。 シアラ 川谷:これまでも書いてきた女性の名前シリーズの一曲。名前はいつも思いつきで、架空の人物ではありますが、聴いた人が感情移入しやすく、それぞれの解釈で感じ取ってもらえる歌詞にすることを意識しています。この曲は先に楽曲を作り、その雰囲気に引っ張られるようにして歌詞を書きました。 晩春 川谷:サウンドがアバンギャルドだから、歌詞で何を言っても成立するというこのバンドの強みが一番出た曲だと思います。僕がやっている別バンドのindigo la Endだとここまでストレートには言わないけど、ゲスの極み乙女の音楽性だと恥ずかしくならないところがあります。 作業用ディスコ 作業用ローファイ 川谷:ネットでよくある作業用BGMのパロディをやろうと思って、自分たちのスタジオで宅録っぽい感じで作りました。この時代にアルバム的なことをやるのにどれほどの意味があるのか分からないけど、せっかく作るのなら、アルバムとして曲をつなぎたくて入れました。この2曲があることで全体が締まった印象があります。ずっと「作業用」と言っているので、ぜひ作業中に聴いてほしいです(笑)。 ちゃんMARI:「作業用ローファイ」はアップライトピアノの音がいいなと思って、自宅で録音しました。自宅のピアノでデモを作ることはありますが、音源になるのはこれが初めてです。 歌舞伎乙女 川谷:僕らが初期にやっていたようなロックバンド然としたアレンジで作ったけど、今やるとすごく洗練された感じになるなと思いました。歌舞伎の「いよー!」という掛け声を入れたり、僕らが好きなプログレ要素を入れたり、ちゃんMARIがショパンの「華麗なる大円舞曲」をピアノで弾いたり、ゲスの極み乙女の伝家の宝刀がいくつも入った曲です。

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